石油危機で見直されるFCV
備蓄のある日本では、ガソリン価格の値上がりはあるもののGS(ガソリンスタンド)に行列ができるような事態には現時点ではなっていない。しかしながら、備蓄量の少ない東南アジア諸国や、今回のイラン戦争で大きな打撃を受けた中国では、ガソリンの争奪戦が始まっている。
日本の場合、第1次・2次石油ショックの経験からある程度の備えはできていたわけだが、とは言え、イラン戦争が長期化した場合には話は変わる。石油不足になった場合にはもちろんだが、それ以前にガソリン価格の高騰が問題になる。
そこで期待されるんが、EVやFCVというガソリンを必要としない自動車だ。3度目の正直という言葉もあるが、おそらく今回ばかりは脱石油という流れは自動車業界でも進むのではないか?
EVではなく、水素自動車(FCV)が選択される可能性
テスラや中国市場でのEVは一時期ガソリン車に変わる存在になると思われたが、現状ではホンダの惨状を見るまでもなく、EVは大きく後退していると言えるだろう。蓄電池次第という問題は解決されておらず、充電に時間がかかるという問題もなかなか解消されない。
そこで再評価の期待がかかるのが水素自動車(FCV)だ。現状は、ほぼ日本国内だけ、しかも大半は首都圏、トヨタのお膝元の東海地区でMIRAIが走っているだけだ。東京都では水素バスも多く走っており、元々期待されていた水素トラックも登場している。
東京都では、水素タクシーを進める計画も発表されており、少なくとも東京周辺では今後水素自動車を見る機会は増えるであろう。EVとは異なり、充填時間もほぼ2~3分というメリットもある。ひょっとするとひょっとするかもという期待感は十分だろう。
問題は水素ステーション
ではなぜ2015年に発売された水素自動車MIRAIが全く普及しないのか?最大の問題は、水素ステーションが増えないことだ。水素のガソリンスタンドである水素ステーションは、岩谷産業が孤軍奮闘している以外はほとんど増えていない。
辛うじて水素自動車を使えるのは、水素ステーションが点在する首都圏エリアと東海エリアだけである。これでは普及するはずもなく、量産化も進まず価格が高いままであり、結果としてユーザーの選択肢から外れてしまっている。
問題はもう一つあり、水素を自動車の水素タンクに充填するためには−40度(プレクール)に冷却する必要がある。折角の二酸化炭素ゼロも充填時に大量の二酸化炭素を排出するという問題も残っている。
EVからFCVへ舵を切り替える自動車メーカー
いくつかの問題点は抱えるものの、石油に全く依存せずに走るという実力は再評価されるはずだ。自動車としての実力はすでに折り紙付きで、FCVを運転するとガソリン車に戻れなくなるというドライバーも少なくないと聞く。
ホンダのEV撤退は象徴的であるが、イラン戦争が長引くようだとEVからFCVへ舵を切り替える自動車メーカーも増えてきそうだ。BMWはトヨタ自動車と提携して、2028年度に量産型FCVの発売を計画しているが、これに追随する自動車メーカーは増えそうだ。
脱石油に走る中国市場でも、EVからFCVの量産化は進められるだろう。世界的に量産化が進んだ場合には、低価格化が進むことは容易に想像がつく。意外にもFCVが主役に躍り出る可能性も無きにしも非ずということかもしれない。

