原油価格は90ドル台突入へ

8月17日の停戦交渉期限を無視するように、米国によるイラン攻撃が再開し、イラン側も応戦中である。これにより、停戦後に落ち着きを見せていた原油価格も急騰を開始し、7月23日には42日ぶりに90ドル台に突入している。今のところ、株式市場にはそれほど大きな影響は見られないものの、これ以上の価格上昇は世界経済にある程度の影響を及ぼす可能性も出てくるだろう。
日足の一目均衡表では、90ドル付近のところに雲の上限ラインがあり、ここがサポートラインとなるのかどうかに注目が集まる。仮に、この水準を超えて上昇していくようなら、ガソリン価格の上昇を招きかねない。久しく注目されることのなかった原油相場だが、大きな正念場を迎えるとともに、世界の金融市場にも影響を及ぼしそうだ。
前回ほど原油価格が上昇しない理由とは
米国によるイラン攻撃再開にもかかわらず、株式市場には現時点ではそれほど大きな影響が見られない。あたかも、もはや原油価格が多少上昇したところでAI株式相場には関係がないと言わんばかりの状況である。
事実、本年2月28日の米国・イスラエルによるイラン攻撃から9日間で原油相場は67ドルから94ドルと約40%上昇した。これに対して、今回の攻撃再開では攻撃開始9日間で73ドルから83ドルと約13%の上昇にとどまっている。投資家もトランプ大統領の度重なる発言に慣れてしまったのか、「またかよ!」というくらいに受け取っているようで、株式市場に影響を及ぼすほどではないと軽く考えているように思える。
しかしながら、大したことはないはずなのに原油価格は落ち着く様子を見せず上昇は継続しており、ホルムズ海峡封鎖ではなく、紅海封鎖という新たなリスクが叫ばれるようになると、徐々に投資家も不安心理を抱き始めているようだ。
紅海封鎖で原油価格が上昇するリスク
ホルムズ海峡封鎖で急騰した原油価格だが、時間とともに落ち着きを見せ、度重なるトランプ大統領の発言にも慣れてきて、原油価格は高水準を維持しているものの、緩やかな下落トレンドを見せていた。サウジアラビアは紅海経由で原油を輸出しだし、ホルムズ海峡を封鎖しても紅海経由で原油を輸出できるようになっていた。
そして今回起こったのがイランによる紅海封鎖だ。正確には、イランの支援を受けているイエメンの民兵組織による紅海のバブ・エル・マンデブ海峡の封鎖だ。これにより、サウジアラビア経由の原油の輸出がストップすることになる。
イラン紛争に慣れてしまったせいか、当初はこのニュースにも原油相場は前回ほど大きく動かなかった。しかしながら、事の重大さに気づきだしたのか、原油価格は徐々に上昇を開始し、遂には危険水準となる90ドルまで上昇してきた。原油価格の上昇は各国の金利上昇を促すこととなり、米国や日本の長期金利は上昇を開始しした。
現在、AI相場の調整時期に入っている株式相場に関しても、必ずしも買われすぎたAIデータセンター銘柄の下落によるものではなく、原油価格の上昇が株式市場に影響を及ぼしているとも考えられるだろう。
米国戦略石油備蓄水準が低下している
ホルムズ海峡封鎖による原油価格急騰相場が落ち着きを見せてきた最大の要因は、米国による石油備蓄水準が高かったことだ。つまり、すでに米国は中東の石油に頼る必要はなく、日本なども中東依存から米国の石油に依存することで、当面の石油不足問題からは解放されると考えられていた。
ところが、イランによる紅海封鎖は厄介な問題を引き起こすことになる。日本などに自国の備蓄分を輸出していた米国の石油備蓄水準が大きく低下しており、このままでは遠からず米国は備蓄している石油を輸出することができなくなる。すると、日本をはじめとして米国に依存していた国は一気に石油不足という問題を引き起こされることになる。
ホルムズ海峡だけでなく、紅海まで封鎖されてしまうと中東からの輸出は完全にストップしてしまうことになる。米国からの備蓄分の輸出がなくなれば石油ショック再来となるわけだ。
イランの戦略は金融市場の崩壊
言うまでもなく、イランによる紅海封鎖とはイランの戦略であり、米国が最も恐れる金融市場の崩壊を狙ったものだ。米国としては、何としてでも11月の米大統領中間選挙までは金融市場は崩壊させたくないはずで、これを狙った戦略であろう。
現在、株式市場は世界的に調整期に入る気配を見せている。表向きは、買われすぎのAI銘柄の調整と言われているが、かと言って、AI銘柄の資金が他の銘柄に大きく移動している気配はない。今後、原油価格がさらに上昇し、世界の金利もまた上昇していくようなら、単なる調整ではなく、大きな調整に発展する可能性にも十分注意する必要はある。
イラン側から紅海封鎖を解除する可能性は低く、米国がどう動くのか注目される。もはや名目上となったが、8月17日の停戦・交渉期限までには何らかの動きがあるのではないか。

