恐怖指数(VIX指数)とは
恐怖指数とは、市場の不安やリスクの高さを反映する指標のことで、株式市場の短期的な見通しに対する投資家の心理状態を表す。この指数が高いほど、市場が不安定で、リスクを警戒する投資家が増えている、つまり株式市場が下落する可能性が高まる。
恐怖指数は別名「VIX指数(Volatility Index)」とも呼ばれ、株式市場のボラティリティ(価格変動の度合い)を測る代表的な指標として広く知られている。VIX指数は、S&P500を対象とするオプション取引のボラティリティを基に、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が算出している指標だ。
VIX指数は、一般的に10〜20の間を推移するとされており、この範囲では市場が比較的安定している、つまり、株式市場は上昇しやすいと判断される。しかし、市場の警戒感が高まり、投資家心理が冷え込むと、VIX指数が大きく上昇する。
過去には80以上にもなったことのあるVIX指数
通常はVIX指数が30以上になると、株式市場に対して投資家の不安が高まっていると判断される。つまり、急落の可能性があるわけだ。過去の急落相場ではVIX指数が80を超えたこともある。
リーマンショック(2018年10月) VIX指数80.86
コロナショック(2020年3月) VIX指数82.69
植田ショック(2024年8月) VIX指数65.73
まさに、売りが売りを呼ぶという展開になると、VIX指数は急上昇することになる。投資家の不安心理が極限状態に入っていることを表す。
近年の恐怖指数(VIX指数)が上昇しない3つの理由
一部のAI関連銘柄が株価指数を引き上げている
S&P500が上昇していても、実態は指数に対して寄与度の高い一部のAI関連銘柄が上昇し指数を押し上げており、S&P500全体へのリスク意識が高まらないため、指数全体のボラティリティが抑え込まれている。
プットオプション需要の減少
投資家が株価の急落に備えて買う「プット・オプション(保険)」への需要が減少していると、VIX指数は上昇しまない。押し目買い意欲が強く、「市場が下がってもすぐに持ち直す」という楽観的な見方が広がっていると、保険コスト(オプション価格)が低下するためだ。
市場の流動性が高く、経済指標も安定しているため
本当の意味での市場のパニック(恐怖の急増)には、株式市場とボラティリティ市場の両方で流動性の悪化が伴う必要がある。経済指標が安定しており、市場参加者が安心して売買できる十分な流動性が保たれている場合、価格の乱高下は起きにくくなる。
日経平均株価が乱高下する理由とは
米国株式市場の恐怖指数(VIX指数)は安定しているが、日経平均株価の恐怖指数(日経VI)は米国ほどは安定しておらず、株式市場も大きな乱高下を繰り返している。5月相場はほぼ上昇という感じで、乱高下というよりも急騰相場であり恐怖指数は安定していた。
ところが、6月に入ると少しばかり様子が異なり、急騰・急落の乱高下相場となっている。この要因は、日本の国債市場の恐怖指数(S&P/JPX日本国債VIX指数)が一年ぶりの高値水準に上昇したことによるだろう。足元では、米国国債の同様の指標を上回っている。
インフレ懸念から金利が上昇しており、日銀が適切な対応をし中れば国債市場は波乱の展開になると予想されているのであろう。債券市場の波乱は、株式市場にも大きな影響を及ぼすことになるので注意が必要だ。
VIX指数が安定している限り米国株式市場は安心なのか
では、VIX指数が安定している限り、米国株式市場には下落の心配はないのだろうか。必ずしもそうとは言えないだろう。VIX指数が安定している最大の要因は、一部のAI関連銘柄(生成AI銘柄)が指数を引っ張っているわけだから、これまで指数を引っ張ってきたAI関連銘柄が大きく下落すれば指数は下落し、VIX指数も上昇するだろう。
しかし、売却された銘柄の資金が現金化される、あるいは国債購入などに流れるのではなく、S&P500の他の銘柄に流れる場合には銘柄にもよるが、VIX指数の上昇幅は少なくなる可能性はあるだろう。他の銘柄に資金が流入した場合には、S&P500内で資金が循環していることになり、市場全体が安定していればVIX指数も安定するだろう。
VIX指数が動き出せば要注意
株式相場が安定しすぎているため、VIX指数も動かないもののと思われているが、今後の金利上昇局面により債券買いが始まった場合には、これまでとは違った動きがVIX指数に見られる可能性が高い。そうなったら要注意だ。すでに、米国株式市場の株式リスクプレミアムはほぼなくなっており、いつ大量の株式購入資金が債券市場に流れても不思議ではない。
インフレによる金利上昇であり、インフレだから株式市場も上がり続けると思うかもしれないが、元本保証の債券市場で高利回りが確保できるのであれば、リスクを冒してまで株式運用する必要はなくなるのだ。少なくとも大口投資家である機関投資家などはそうなる傾向が強い。
長期金利の上昇により、VIX指数がこれまでと違う動きを見せるようになれば注意が必要だ。

