東京エレクトロン株式分割発表
東京エレクトロンは、5月29日大引け後に1対5の株式分割と最大1500億円の自社株買いを発表した。株式分割は9月30日を基準日とし、10月1日が効力発生日。自社株買いは発行済み株式の1.6%に当たる750万株(分割後は3750万株)・1500億円を上限とし、6月1日から2027年3月31日まで取得する。
近年はやりの株式分割ではあるが、人気の値がさハイテク株、しかもAI関連のド本命銘柄、さらには日経平均への寄与度も非常に高いことから、単なる株式銘柄の分割というだけではなく、東京市場全体への影響も大きいと思われる。
株式分割へ踏み切った背景
株価の高値圏推移と投資単位の肥大化
東京エレクトロンは、世界的な半導体需要の拡大を背景に業績を急成長させてきた。これに伴い株価は上昇し、最低投資金額(100株単位)が200万円台後半になっている。日本の少額投資非課税制度(NISA)などを活用して日本株への投資を始める個人投資家が増える中、この高い投資ハードルが課題となっていた。
流動性の向上と株主層の多様化
日経平均への寄与度が高いことで知られるが、特定の機関投資家や海外投資家だけでなく、国内の個人投資家層を広く組み入れることで、株主構成の安定化を図る狙いがある。先物やオプション取引での利益を目的とした投機筋による売買を抑える目的もあるだろう。また、売買が活発になることで、市場における流動性が高まり、株価の極端な乱高下を防ぐ効果も期待できる。
東証からの投資単位引き下げ要請
東京証券取引所は、個人投資家が投資しやすい環境を整備するため、望ましい投資単位(5万円以上50万円未満)への移行を上場企業に要請している。今回の分割はこの市場の要請に対応したものであり、市場の健全な発展に寄与する姿勢を示したものだ。
株式市場および投資家への影響
東京エレクトロンは日経平均に対する寄与度が非常に高い値がさハイテク株の代表格だ。株式分割が行われると、日経平均株価の算出に用いられる「みなし額面」や採用株価の調整が行われるため、特定の1銘柄が指数全体を過度に左右するリスクが軽減され、日経平均の健全化にもつながることになる。
また、これまで「東京エレクトロンに投資したくても資金が足りない」と諦めていた若年層や個人投資家が、ポートフォリオの1つとして同社株を組み入れやすくなる。さらに、単元未満株で取引していた投資家が、通常の単元株主として議決権を得る機会も増えることになる。
既存の株主にとっては、保有している株数は分割比率に応じて増えるが、資産総額に変化はない。しかし、流動性の向上によって株価が見直され買いされやすくなるため、中長期的な株価の押し上げ要因(アナウンスメント効果)として歓迎される傾向にある。
今を時めくAI関連銘柄の大本命、東京エレクトロンの株式分割は市場にとってはかなりの好材料とし捉えられるものと思われる。
日経平均株価は下落する?
東京エレクトロンの株価が5分割されることは、同時に日経平均株価への寄与度が5分の1に低下することを意味する。これまで日経平均の上昇の一翼を担ってきた東京エレクトロンの株価だけに、日経平均が下落するのではと考える人もいるだろう。
結論から言うと、その心配は無用だ。日本経済新聞社が指数の連続性を保つために、算出に用いる「除数」を修正するか、銘柄ごとの「株価換算係数(みなし額面)」を調整するため、分割の手続きそのもので日経平均株価の数値が直接不連続に下がることはないのだ。
過去にも、任天堂、ファーストリテイリングなど超値嵩株の株式分割は行われているが、日経平均が影響を受けて下落したという事実はない。

