米国超長期国債金利が上昇

米国30年物国債の金利が上昇している。上昇しているのは今年だけではなく、実は、チャートで見られるように2020年初旬から急上昇しているのだ。2020年と言えばコロナだが、実はそれ以前にこの時期には先物市場の原油価格がマイナス価格となった時期でもある。
2020年初旬には、1%を割り込んでいた米国の超長期金利、つまり30年物国債の金利はその後急上昇し続けていった。コロナ対策として、世界中で金融緩和政策が実施されたこともあり、超長期国債は上昇し続け、株式市場は暴騰相場を実現させていくことになる。
しかし、世界的な金融緩和政策は同時に世界的なインフレ時代を到来させ、先進国では日本を除く多くの国が金融政策を変更し、金利上昇時代を迎えることになる。金利の上昇はインフレを抑えるのには役立つが、株式市場にとっては厄介な問題となる。金利が上昇しすぎると、株式市場から債券市場に資金が流れてしまうからだ。米国30年物国債の金利5%超というのは、株式市場にとっては危険水域となり、債券市場にお金が流れていく可能性が懸念される。
誰が米国30年物国債の金利を上昇させているのか
超長期金利の上昇が株式市場にとって悪影響を及ぼすのであれば、金利を下げることはできないのかということになるが、市場金利が上昇しているわけだから問題はそう簡単ではない。金利が上昇しているというのは、30年ローンでお金を借りたいというニーズが大きいからで、この需要がある限りはそう簡単には金利は下落しないのだ。
では、いったい誰が30年ローンで資金調達をやりたがっているのか。通常、30年ローンと言えば住宅ローンだが、ここ数年で言えば、米国での住宅着工件数は低下しており、住宅ローンのニーズが大きいとは思えない。2007年に30年物国債の金利が5%を超えたが、この時の主役は今となっては悪名高いサブプライムローンであった。サブプライムローン問題が表面化したことで株式市場は大きな影響を受けることになるが、この水準が米国30年物国債の金利5%越えのタイミングであったのだ。
話を戻して、今回、米国30年物国債の金利5%越えの主役となったのは、一つには国の借金(米国政府の国債発行)、そしてもう一つがハイパースケーラーであると考えられる。
ハイパースケーラーのキャッシュフローが枯渇している

BofA GLOBAL RESEARCHによると、ハイパースケーラーの12か月先フリーキャッシュフローが足元ではマイナスに転じている可能性が出ている。要因は言うまでもないだろうが、ハイパースケーラー(巨大IT企業)のフリーキャッシュフロー(FCF)は、AI関連のデータセンターや半導体への巨額な先行投資が本業の稼ぎを上回り、急速に縮小・悪化している。
AIデータセンターへの投資額が莫大な額となっており、あれほどの利益を上げていたハイパースケーラーでさえ資金難に陥ってきているというわけだ。直近では、上場企業としては過去最大規模となるグーグルの約13.5兆円にものぼる公募増資が知られているが、メタも資金調達のうわさが絶えない。ちなみに、グーグルに至っては英ポンド建てで100年債10億ポンド(約2,080億円)を調達している。
生成AI部門は未だ収益が上がっているわけではないが、AIデータセンターを作らないと競争から脱落することを意味するわけで、ハイパースケーラーは資金を調達せざるを得ず、このことが米国30年物国債の金利を5%台へと引き上げていると考えられるのだ。
超長期金利が上昇するとどうなるのか
ハイパースケーラーの旺盛な資金需要、しかも超長期での資金調達が30年金利を引き上げた。ハイパースケーラーが調達した資金で潤ったのが、半導体であり電線であり、メモリ市場だったわけで、ハイパースケーラーの資金調達がうまくいくっている間に生成AIのマネタイズがうまくいけばめでたしめでたし、となるが、そうでない場合には株式市場には暗雲が立ち込めることになる。
また、米国30年物国債の金利上昇は、米国債の格付けに影響を及ぼす可能性もささやかれている。格付けランクの高い米国市場だから資金調達ができていたのが、格付けに変更があるようだと、格付けの悪い企業は債券、そして株式も売られることになる。
さらに、30年物国債の金利上昇は住宅ローンの金利も引き上げることになり、ここ数年にわたり上昇し続けている米国の不動産市場にも深刻なダメージを与える可能性も出てくる。株もダメ、不動産もダメとなると信用経済を支える担保価値が大きく下落することになり、金融危機という最悪の状況を迎えることになりかねない。
米国や日本など経済の地盤が強い国はそう簡単には金融危機に陥らないだろうが、韓国など基盤の弱い国の場合には金融危機のリスクはいつ起きても不思議ではない。

