イラン紛争勃発から下落トレンドへ
株式市場とは、「噂で買って事実で売られる」と言われるが、三菱重工の株価がまさにその通りの動きをしている。防衛関連として上昇していた株価が、イラン紛争勃発の翌日に高値を付けて下落トレンドに転換、その後、トランプ大統領の事実上の紛争終結宣言で底値完了、新たにトレンド転換しようとしている。
象徴的だったのは、イラン紛争終結宣言の翌日に三菱重工が「防衛ドローン」の量産試作機を開発中とのニュースが流された。今回のイラン紛争では高額なミサイルや戦闘機ではなく、安価なドローン戦略が大々的に報道された。あたかも、これからの戦争はドローン戦略が中心になるというニュースが散見され、日本においては三菱重工が主導することになると言わんばかりだ。
このニュースにより、イラン紛争勃発の翌日に5,208円の高値を付けてから下落し、紛争終結宣言まで3,404円まで売られていた三菱重工の株価は一時4,000円台まで急速に戻しを見せた。
防衛ドローンの開発
三菱重工業は2026年6月、「防衛ドローン」の開発を急いでいることが明らかになった。護衛艦やミサイルの製造で知られる同社が防衛ドローンの開発を急いでおり、迎撃型ドローンの量産試作機を開発している。伊藤栄作社長は、飛来してきた敵ドローンを味方のドローンで撃ち落とす迎撃(カウンター)ドローンを、研究所と事業部門が連携してわずか3カ月で開発したと明かした。
同社はこの量産型試作機について防衛省への採用を目指して、提案することも視野に入れているとされている。報道によれば、実証試験のスケジュールも具体的に進んでおり、令和8年(2026年)7月上旬までに実証試験用の迎撃型ドローンを選定し、7月下旬から8月上旬に取得して実証試験を実施、8月下旬までに量産調達契約を締結し9月納入を目指す計画とされているが、実証試験の結果次第では量産調達契約に至らない可能性にも言及されている。
さらに、これまで未公表だった攻撃型ドローンの存在も、小泉進次郎防衛相のSNS投稿によって明らかになった。迎撃型に加えて攻撃型も並行して開発されていることが判明しており、ウクライナや中東の紛争でドローンが主要な役割を担う中、日本でも防衛ドローンの開発が本格化しつつあるようだ。
伊藤社長の発言の背景とは
伊藤社長は防衛ドローンについて、三菱重工が「昨今はドローンや人工知能(AI)を活用した『新しい戦い方』の脅威が増しており、国においても新しい防衛の在り方が検討されている」と説明し、技術的な動向を先読みして蓄積した基盤技術と最先端の知見を組み合わせ、国の要請に素早く応えることが同社の責務だと語っている。
背景には政府の防衛政策の転換もあるだろう。政府が2026年末に予定する安全保障関連3文書の改定では、無人機やAIを使った「新しい戦い方」への対応が主要な論点となる見通しで、ドローンを国内で大量調達できる生産基盤の整備を打ち出す方針とされている。これに対応する形で、同社は開発を急いでるわけだ。
AI・自律飛行技術での協業
三菱重工は無人機の頭脳となるAI技術でも動きを見せている。2026年3月、米国の防衛テクノロジー企業Shield AIとの協業により、無人機に搭載するAI(ミッション・オートノミー)の開発でShield AI社の「Hivemind Enterprise」というAI開発環境を活用した飛行実証に成功したと発表した。AIの開発、実機搭載、飛行までの一連のステップをわずか8週間で完了しており、群馬県太田市のテストフィールドで実施された。
株式市場はどう受け止めたか

トランプ大統領のイラン紛争終結宣言、そしてその翌日の防衛ドローンニュースを株式市場はどう受け止めたのか。週足チャートで見ると、イラン紛争終結宣言の週に一目均衡表の下限がサポートラインとなり、その後は雲の上限まで上昇している。
2月から3月上旬にかけての高値形成時の信用買い残が相当数残っていると想定され、9月上旬あたりまでは頭の重たい展開も予想される。逆に言えば、買い残が残っている今の安い価格が仕込み時なのかもしれない。むろん、AI爆上げ相場の影響で、大型株売りからのAI銘柄買いが再び起こると、安値を試す展開もあるかもしれない。
三菱重工株は「防衛ドローン」の開発を急いでいるとの報道を受けて大幅続伸し、防衛関連としての位置づけがより高まる形になったと報じられている。また業界内では、同社の防衛ドローン量産試作機の開発を、単なる新製品ではなく日本の防衛産業そのものが転換し始めたサインと捉える見方もあり、これまでベンチャー企業が主役とされてきた防衛ドローン市場に、重工大手が本格参入する構図として注目される。
三菱重工は従来、護衛艦やミサイル、ガスタービンといった大型・高価格帯の防衛装備を強みとしてきたが、ウクライナ・中東紛争を契機とした「安価な小型ドローンを大量投入する新しい戦い方」への対応を迫られる形で、迎撃・攻撃両タイプのドローン開発に急速に舵を切っている。政府の防衛戦略見直し(2026年末予定)とも歩調を合わせており、今後の国内防衛調達における三菱重工の存在感が一段と高まる可能性がある分野として注目される。

